俺様御曹司の契約妻になったら溺愛過剰で身ごもりました

（素敵な恋なんて分不相応なことは望まない。同僚と仲良くおしゃべりしたり、そんな普通の会社員生活を送りたい！）

　ルーブデザインは渋谷の裏通りにオフィスを構えている。建築関連の会社らしい、凝った造りのビルで社員数は五十名弱。少数精鋭でやっていると面接で説明を受けた。

　なかのインテリアもセンスがいい。木のぬくもりが感じられる落ち着く空間にグリーンが効果的に配置されている。

「氷堂日菜子と申します。今日からここでＣＡＤオペレーターをさせていただくので、どうぞよろしくお願いします」

　前の職場よりずいぶんと平均年齢の若そうな同僚たちに、そうあいさつをした。日菜子なりに精いっぱいの笑顔を作ったつもりだけれど、彼らの目にはそうは映っていないのだろう。日菜子はちょっと肩を落とす。

（きっと、無愛想な女だと思われてるんだろうな）

「チームリーダーの中野です。よろしくね、氷堂さん」

　新しい上司となった男性は、三十代半ばくらいの笑顔が爽やかな人だ。感じのよさそうな人物だったことに、ほっとする。

「氷堂さんの指導係は、同じ製図担当の彼女ね。童顔だけど、氷堂さんより年上だから」
「あ～、年齢の話題はＮＧですよ！」