俺様御曹司の契約妻になったら溺愛過剰で身ごもりました

「日菜子！」

　悠馬の手が日菜子のそれに重ねられようとした瞬間、横から伸びてきた別の手が日菜子をとらえた。

「え？」

　悠馬と日菜子が同時につぶやく。

「汚い手で人の妻に触れるなっ」

　鋭い眼差しで悠馬をにらんだのは善だった。いつも穏やかな彼がこんなに感情をあらわにすることは珍しい。善はそのまま今度は日菜子に気持ちをぶつけた。

「お前もだ。自分が誰のものか……ちゃんと自覚しておけ」

　突然の彼の登場に日菜子も困惑していたけれど、それ以上に動揺しているのが悠馬だ。焦ったように声を上擦らせて言う。

「え……大狼だよな？　妻ってどういうことだ？　日菜子はまだ独身じゃ……」
「彼女は俺と結婚してる。都合の悪いあれこれをバラされたくなかったら、今すぐ帰れ」