俺様御曹司の契約妻になったら溺愛過剰で身ごもりました
リビングのソファにふたりは並んで座る。先に沈黙を破ったのは善のほうだ。怒りと悲しみの入り交じる顔で彼は口を開く。
「どんな理由であいつと会ってたのかは知らないが、あんまり信用しないほうがいい。少し調べたが、自身の不倫が原因で最近離婚したそうだ。で、不倫相手の女がどうもヤバい筋の女だったらしくて実家にも愛想つかされて金に困ってるようだ」
不倫ということは、彼には妻がいたことになる。
(駆け落ち相手の彼女とすぐに別れたって話は嘘だったのね)
「……なんとなく予想はついていました」
日菜子は冷静に答える。ヨレヨレのスーツや疲れきった表情から、彼が生活に困っているのはすぐにわかった。多分、偶然に日菜子を見かけて……身も蓋もない言い方をすれば金づるになると思われたのだろう。
「だったら、どうして?」
善はちょっとイラ立った様子で尋ねた。日菜子は軽く目を伏せ、早口に言う。
「それでも私は彼のことが……。善さんのおかげで恋愛感情がどういうものか、やっとわかったんです」
声がかすかに震えていた。そのことに善が気づかないよう、日菜子は祈った。
(私がこう言えば、善さんも気が楽になるかもしれない。私との結婚生活は予定どおり解消して、本当に好きな女性を……)
ほんの少しの間を置いてから、善の長い指が日菜子の顎をすくった。至近距離で視線が絡む。ふたりは黙って見つめ合った。
「どんな理由であいつと会ってたのかは知らないが、あんまり信用しないほうがいい。少し調べたが、自身の不倫が原因で最近離婚したそうだ。で、不倫相手の女がどうもヤバい筋の女だったらしくて実家にも愛想つかされて金に困ってるようだ」
不倫ということは、彼には妻がいたことになる。
(駆け落ち相手の彼女とすぐに別れたって話は嘘だったのね)
「……なんとなく予想はついていました」
日菜子は冷静に答える。ヨレヨレのスーツや疲れきった表情から、彼が生活に困っているのはすぐにわかった。多分、偶然に日菜子を見かけて……身も蓋もない言い方をすれば金づるになると思われたのだろう。
「だったら、どうして?」
善はちょっとイラ立った様子で尋ねた。日菜子は軽く目を伏せ、早口に言う。
「それでも私は彼のことが……。善さんのおかげで恋愛感情がどういうものか、やっとわかったんです」
声がかすかに震えていた。そのことに善が気づかないよう、日菜子は祈った。
(私がこう言えば、善さんも気が楽になるかもしれない。私との結婚生活は予定どおり解消して、本当に好きな女性を……)
ほんの少しの間を置いてから、善の長い指が日菜子の顎をすくった。至近距離で視線が絡む。ふたりは黙って見つめ合った。