俺様御曹司の契約妻になったら溺愛過剰で身ごもりました
「日菜子に決まっているだろう」

 日菜子の覚悟を知ってか知らずか、彼はあっさりと言い切った。

「え、でも……」

 善はいぶかしげに首をひねる。

「というか、その質問が出てくる理由がわからないな。見合いの場でプロポーズして以来、日菜子だけを愛し続けてきただろ」

 それはたしかにそうなのだが――。

「だけど、私たちは契約結婚でしょう? 善さんだって、いつか終わりにするつもりで……」

 善はふっと苦笑する。

「そんなの、お前を手に入れるための方便に決まってる。一年だけとハードルをさげることで結婚の合意を取りつけたかったんだよ」

 思いがけない彼の言葉に日菜子は戸惑うばかりだ。

「え、えぇ?」

 善は不敵に笑って続ける。

「俺は初めて会ったあの夜からお前に惚れてた。契約結婚の期間中に日菜子の心も手に入れて、契約を終了する計画だったんだよ」

「け、計画?」

 目を白黒させるばかりで事態をのみ込めていない日菜子の手を取って、彼は薬指にキスを落とす。

「ぜ、善さん?」
「予定より早いけど、計画を実行に移していいか?」

 日菜子は黙って彼の言葉の続きを待つ。
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