俺様御曹司の契約妻になったら溺愛過剰で身ごもりました
「たしかにあのとき、南は泣いてた。コンタクトが瞳の上のほうにズレてものすごく痛かったらしい。俺はちょっと見てくれと頼まれただけだ」
「コ、コンタクト?」

 南がハードレンズ使用者なことは日菜子も知っている。なにかと面倒らしく『視力のいい日菜子ちゃんがうらやましい』とよく言われる。

「いや、でも……そんなベタなこと」
「なにを言われようとそれが真実だから仕方ない。南はしばらくそれで騒いでたから、証人ならいくらでも用意できるぞ。もっとも、みんな俺の身内だから信用度はややさがるか?」
「あ、会合っていうのは本当なんですね」

 実は南とふたりきりなのでは?とちょっと、いや、かなり疑っていた。善は寂しそうな顔でぼやく。

「俺はそんなに信用がないのか。ルーブデザインの仕事じゃなく、大狼建設本体のほうの集まりだったんだよ。まぁ、親族会議みたいなもんだな」
「なるほど」

 そういえば、彼はあの日の予定を仕事という言い方はしていなかったように思う。はたと気がついたように日菜子は尋ねる。

「でも、ルーブデザインとは無関係ならどうして南さんが?」

 その質問に逆に善のほうが驚いた顔をする。

「え、誰かから聞いてないのか?」
「なにをでしょう」

 善はその問いには答えず、困ったように眉尻をさげた。

「そうか、日菜子は知らなかったのか。なら誤解されるような行動を取った俺にも非があるな」
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