俺様御曹司の契約妻になったら溺愛過剰で身ごもりました
(なんだ。全部、私の勝手な勘違い……)

「じゃあ、善さんは南さんのことを好きなわけじゃなかったんですね」
「ありえないな」
「――かった。よかったぁ」

 思わず顔をほころばせた日菜子の頭を善がそっと撫でた。

「やましいことをしたつもりはまったくないが、誤解させて悪かった」
「善さん……」
「けど、日菜子にヤキモチを焼かれるのは悪くない。俺ばかり嫉妬しているのは悔しいしな」
「嫉妬? なににですか?」

 善はおもしろくなさそうな顔になってぼやく。

「柘植に決まってる。俺と南より、よっぽどリアリティがあってかなり焦った」
「あ……ごめんなさい」

 たしかに、実際に悠馬と連絡のやり取りをしていた自分のほうが罪は重い。日菜子は正直に彼との間にあったことを説明する。

「再会は偶然でした。でも、善さんが私に遠慮せず南さんのところにいけるように彼に協力してもらおうかと考えたんです。だから連絡先を交換して」

 悠馬は金に困っている様子だったから、見返りに氷堂家関係の仕事を紹介するとでも約束すれば、手伝ってくれると思ったのだ。

「本当にごめんなさい」

 頭をさげると善は優しくほほ笑んだ。

「もういいよ。俺もお前宛てのメッセージを勝手に読んだしな」
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