俺様御曹司の契約妻になったら溺愛過剰で身ごもりました

「はい。仕事が終わるのを急かすようで申し訳ないとは思ったのですが、妊娠にびっくりしてしまって……少しでも早く善さんの顔を見たくて」

　善は力なく頭を振った。

「そうだったのか。もし知ってたら、親族会議なんて抜けて日菜子のもとに走ったのに。俺はなにも知らずのんきに……」

　彼の声には後悔がにじんでいる。

「それはもう気にしないでください。本当は病院に行く前から検査薬で陽性が出ていたんです。けど、私はかりそめの妻だと思ってたので、善さんに告げる勇気が出なくて」

　善は日菜子に向き直り、真摯な声で告げた。

「それなら、せめて謝罪じゃなくて礼を言わせてくれ」
「礼？」

　彼は日菜子のおなかに慈しむような視線を落として続ける。

「役立たずな俺の分まで、しっかり子どもを守ってくれてありがとう」
「……善さん」