俺様御曹司の契約妻になったら溺愛過剰で身ごもりました
 外光がたっぷりと差し込む心地のよい空間が広がっていた。そんなに広くはないのだけれど、座席の配置や導線に工夫があって実際より広々として感じられる。日菜子は興味深く店内を見渡した。

(うん、いいラウンジだわ。天井は通常のホテルより高め、逆にソファの座面は低くしてあるのね)

 日菜子は設計事務所でCADオペレーターとして働いている。仕事柄、ついつい建物の造りやインテリアにばかり目がいってしまう。

(ダメ、ダメ。今はお見合い相手の、どこぞのお坊ちゃんを探さないといけないんだから)

 見合いといっても、正式なものではなく今日は当人同士の顔合わせだ。両親も仲人も同席しない。

(カジュアルにっていうのは、お相手の希望らしいけど……)

 ぐるりと周囲を見回してみれば、女性客ばかりで男性の数は少ない。

(いくらなんでも、あのおじいちゃんは違うわよね。あの人は女性連れだし……あっ!)
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