俺様御曹司の契約妻になったら溺愛過剰で身ごもりました
「その人の言うとおりだと思います。本音で話していただいたほうが時間を無駄にせず済みます」
「時間の無駄ね……わかったよっ」

 大きな音を立てて椅子から立ちあがると、彼は冷たい目で日菜子を見おろす。自分の知る悠馬とは別人のようになった彼が言い捨てる。

「なら、はっきり言わせてもらう。日菜子はかわいくないんだよ! 美人だけど、それだけだ。僕は彼女と幸せになる。そう決めたから君とはさよならだ」

 悠馬はそのまま一度も振り返ることなく店を出ていく。なんのためらいをなく閉められた扉を、日菜子はじっと見つめていた。

「あのなぁ」

 ふと気がつくと、先ほどの男がそれまで悠馬のいた席に座っていた。あらためて見ると、めったに拝めないレベルの美形だ。さぞかし女性にモテることだろう。

「あいつ、そんなにいい男でもないから落ち込む必要ないぞ」

 慰めのつもりなのか、悠馬の出ていったほうに視線を向けながら彼は言った。

「別に落ち込んではいませんので」
「そうは見えないけど。飲むなら付き合ってやろうか」
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