俺様御曹司の契約妻になったら溺愛過剰で身ごもりました
 テーブルの上のワインボトルを持ちあげた彼が怪訝な顔になる。ボトルをひっくり返し、首をひねる。

「柘植はたしか下戸だったよな? これ、あんたがひとりで?」
「彼を待っている間の暇つぶしに」

 約束の時間よりずいぶん前に店に着いた日菜子に対して、悠馬は大幅に遅刻をしてきた。そのため、ボトルを一本ひとりで飲みきってしまったのだ。

「酒、強いんだな」
「どうでしょう。こんなに飲んだのは初めてなので……」

 彼は困惑げに目を瞬く。

「大丈夫かよ」
「あなたには関係ないでしょう。放っておいてください」

 日菜子は彼から顔を背け、片手をあげてマスターに合図する。

「すみません。ワイン、もう一本お願いします」

 運ばれてきたワインをグラスに注ぎ、さらに飲む。特別にお酒が好きなわけではないけれど、酔っ払ってしまいたい気分だった。

(思い描いていた未来が白紙になったとか……今は考えたくないわ)

「あの……邪魔なので、どこかに行ってもらえませんか?」

 ツンケンした態度の日菜子に、彼は小さくため息をついた。

「柘植もどうかと思うけど……そっちにも問題はありそうだな」

 
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