俺様御曹司の契約妻になったら溺愛過剰で身ごもりました
 日菜子はキッと彼を見返す。
 意地の悪い笑みを浮かべて彼は言った。

「あんた、人形みたいだもん。そんなんで人に愛されるわけないだろ」

 その言葉は刃のように日菜子の胸をえぐった。

 かわいげがないことは、自分が一番知っている。でも、どうしたら改善できるのかわからないのだ。

(かわいい女の子になれるのなら、そうしたいわよ!)

「うるさい! 本当に放っておいてください」

 日菜子は勢いよくテーブルに顔を突っ伏した。

「おい。やっぱり飲みすぎなんじゃないか?」

(たしかに……ちょっと酔いが回ってきているような……)

「お前、顔色やばいぞ。水を――」

 日菜子の記憶はそこでぷつりと途切れている。

 ***

「あの人、どんな顔してたっけ?」

 悠馬ではない、日菜子を『人形』と称したあの男だ。酔っていたからか、はたまた封印したいという潜在意識のせいか、あの夜の記憶はおぼろげにしか残っていない。

 だけど、あの男の言葉だけははっきりと覚えている。

(悔しいけど、あの人の言うとおりだ。私には恋愛をする能力がない)

 長いこと婚約者だったのに、悠馬に一度たりとも『好きだ』と告げたことはなかった。愛されないのも道理だろう。

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