俺様御曹司の契約妻になったら溺愛過剰で身ごもりました
 待っていてほしいなんて思われていないだろうけど、日菜子はリビングに居座り続けてた。ソファでウトウトしかけたところでカチャリと扉の開く音が響いた。やや疲れた顔でネクタイを緩めながら彼がリビングに入ってくる。

「おかえりなさい。おつかれさまです」

 立ちあがった日菜子が声をかけると、彼は驚いたように目を瞬く。

「悪い。もしかして待ってた?」
「いえ。そういうわけでは……ゲーム! ゲームを始めたら時間を忘れてしまって」

 言いながら自分がスマホを持っていないことに気がつく。視界の奥にあるダイニングテーブルの上に置いたままだ。彼もそのことに気づいたみたいだが、柔らかく笑むだけでつっこまれることはなかった。

「夕刻開始の会議がえらく長引いてさ、その後もなんかいろいろと……あ、そうそう」

 善は日菜子に視線を向けて言う。

「式のほうは前に説明したとおり、日取りと式場が決まったから」

 結婚式は最初から行う予定で進んでいた。双方の両親が両家の結びつきをアピールするための結婚式はぜひやりたいと主張したからだ。日菜子には特段のこだわりもないので、彼に任せていた。

「わかりました。花嫁役、精いっぱい務めさせていただきます」
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