俺様御曹司の契約妻になったら溺愛過剰で身ごもりました
 ◇◇◇

「はぁ」

 熱いシャワーを頭から浴びながら、善は悩ましげなため息をつく。先ほどの日菜子の顔を思い出すだけで、せっかく鎮まりかけていた熱が再燃しはじめる。

 日菜子がそばにいるだけで理性が崩壊しそうになるのだから困ったものだ。いっそ、無理な我慢などせずに抱いてしまおうかとも思うのだが……あの汚れのない美しい瞳を前にすると手が出せなくなる。

「罪深い女だよなぁ」

 無自覚のうちに善の心をとらえ、離さない。魔性の女とは彼女のことだ。

(まぁ、長期戦は覚悟のうえだ。欲しいのは身体じゃない。心も身体も日菜子のすべてを俺のものにしたいから)

 初めて日菜子に会った日のことを思い出す。始まりはあの夜だった。あれからずっと善の心は日菜子のもとにあった。

 出会いは偶然かもしれないが、運命に変えてみせる。善はそう心に誓った。
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