俺様御曹司の契約妻になったら溺愛過剰で身ごもりました
 一応、褒められているのだろうか。でも、うれしい気持ちより不安が先立つ。彼はなにを言う気なのだろう。先手必勝とばかりに日菜子は言葉を重ねる。

「と、とにかく! この縁談がうまくいくことは絶対にありませんので」
「どうして決めつける?」

 余裕たっぷりの彼に、ジリジリと追いつめられている気分だ。無意識に視線が宙を泳いでしまう。

「氷堂は俺が相手じゃ嫌なのか」

 俺を嫌う人間がいるのか?とでも言いたげな、自信に満ちた瞳が日菜子をとらえる。

(この人に嘘は通用しない……そんな気がする)

 正直に本心を彼に伝えることにした。

「相手の問題じゃないんです。私は恋愛や結婚にまったく向かない人間なので……」
「ふぅん」

 心にさざ波が立つ。理由はわからないけど、いつも、彼の前に立つと逃げ出したいような気持ちになる。

(嫌い……なわけじゃない。でも、苦手だ)

 善は組んでいた腕を解き、ポンと手を打った。

「よし、決めた! 俺たち、結婚しよう」







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