俺様御曹司の契約妻になったら溺愛過剰で身ごもりました
 善は日菜子を見つめる目を優しく細めた。

「だいぶ、お人形を卒業できたんじゃないか」
「え?」
「この契約結婚が終わる頃には日菜子もちゃんと恋愛できるようになるだろ」

(お人形ってどこかで……)

「あ、あぁ~!」

 目の前の彼とおぼろげな記憶がはっきりとつながった。初めて会ったときから善が苦手だったのは、生理的に無理だったからではない。

――彼が、日菜子にトラウマを植えつけた張本人だからだ。

「もしかして……悠馬さんと別れたときの店にいた?」
「やっと思い出してくれた? 俺はオフィスで再会してすぐ気づいたのにな」

 彼はいたずらっぽい笑顔を見せた。

< 72 / 123 >

この作品をシェア

pagetop