俺様御曹司の契約妻になったら溺愛過剰で身ごもりました
「嫌じゃなければ聞いてもいいか?」

 おそらく悠馬のことだろうとすぐにピンときた。日菜子はうなずく。楽しい思い出ではないけれど、語れないほど深い傷なわけではない。もう過去のことだ。

「恋愛や結婚に興味がないのは、あいつのせい?」
「悠馬さんのせいというか……あの一件で自分には向いていないと再確認した感じです」

(どっちかというと、トラウマになってるのは善さんの言葉のほうだったんだけど……)

 でもそれも、善のせいではない。単純に図星だったから、必要以上に傷ついてしまっただけだ。

「俺、あのとき日菜子に結構きついこと言ったと思うけど、悪いとは思ってない。柘植もおおいに問題のある男だけど、日菜子もずいぶん傲慢な女だと思った。自分の感情はさらけ出さないのに愛してもらいたい……ってのはずるいだろ」
「わかってます。あのときはよくわからなくて、悠馬さんをひどいと思ったけど……今は彼の気持ちも理解できる」

 なにを考えているかわからない女より、自分を愛してくれる相手がいい。そう思うのは自然なことだろう。

 善はにこりとほほ笑んだ。

「けど、ひどいこと言ったのは事実だ。謝罪代わりに日菜子をちゃんと恋愛できる女にしてやるよ」
「え?」
「というわけで、俺が気持ちのさらけ出し方の手本を見せてやる。たっぷりかわいがるつもりだから期待してろよ」
「なにがというわけなのか、全然わからないです!」

 日菜子の絶叫を無視して善は不敵に笑う。
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