俺様御曹司の契約妻になったら溺愛過剰で身ごもりました
四章
四章

 翌朝。スーツを着込んだ善は、ベッドに横たわったままの日菜子の顔を心配そうにのぞきこんだ。

「大丈夫か?」
「はい。たいしたことはないので。でも念のため、今日はゆっくりしておきます」

 善は優しく目を細めて続ける。

「そうしてくれ。俺もできるだけ早く帰るし、電話は気にするようにしておくから、なにかあれば遠慮せずにかけてこいよ」
「大丈夫ですから! 早く行かないと、遅刻しちゃいますよ」

 今日は日曜日だけれど、善は外せない予定があるとのことで出かけていった。

 ひとりきりになった部屋で日菜子はふぅと息を吐いて天井を見あげる。

(……い、言えなかった)

 ゆうべの時点ではただの食べすぎだと信じていた。だが、今も続く身体のだるさと軽い吐き気。ある可能性に思い至ったのだ。

(ちょっと遅れているだけだと思ってたけど、もしかしたら……)

 月のものが一週間くらい遅れている。もちろん絶対とは言えないけれど、可能性はゼロではないと思う。ならば、善に話すべきだろうと思ったのだけれど、いざ彼の顔を見たらなにも言えなくなってしまった。

 勘違いだったら悪いかなとか、嫌そうな顔をされたらどうしようとか、次々と浮かぶ可能性が日菜子の口を重くした。
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