俺様御曹司の契約妻になったら溺愛過剰で身ごもりました
『迷惑ではないが……わかった。それなら――』

 夕方には終わるそうなので、五時に品川駅で待ち合わせにさせてもらった。駅前の大きなホテルで催される会合に出席しているそうなのだ。

 マンションから品川駅までは三十分もあれば十分に着く。だけど、落ち着かなくて四時前には家を出た。電車の座席に腰かけると、無意識のうちにおなかに手を当てている自分に気がつき苦笑する。

(つわり、聞いていたよりはつらくないけど……これから重くなるのかな? 私、妊娠のことなにも知らないな)

 窓の外を流れていく景色を眺めていると、無性に不安になる。

 離婚前提の関係なのに妊娠したと話したら、善の迷惑になるだろうか。彼はそんなに無責任な男ではないと頭ではわかっているのに、悪い想像ばかりが頭を駆け巡る。

(しっかりしないと。この子の母親は私なんだから)

 
< 86 / 123 >

この作品をシェア

pagetop