俺様御曹司の契約妻になったら溺愛過剰で身ごもりました
 産婦人科を出た日菜子は駅前のカフェで休憩をしながら今後について考えることにした。マンションに戻って善の顔を見たら、また心が揺れてしまいそうだから。

 ノンカフェインのカフェラテをひと口飲んで、ホッと息をつく。正面の窓からは仕事帰りのビジネスマンたちの姿が見える。みな、そんなに急ぐ必要があるの?と聞きたくなるほど早足だ。

(善さんはもう帰ってるかな? 私、善さんの子を身ごもっていましたよ)

 心のなかで彼に打ち明けてみたけれど、はたして実際に口にする日はくるのだろうか。

 実際問題、善の助けがなくても子どもを育てることは可能だと思った。

『妊娠したけれど、夫婦関係がうまくいかなくなってしまった』

 日菜子がそう言って出戻ったとしても、両親は温かく迎え入れ、孫のこともかわいがってくれるだろう。両親の助けを借りながら、仕事もして、子どもを育てる。

(それが一番いいのかな。もともと、善さんとは離婚する予定だったわけだし)
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