合意的不倫関係のススメ
高校時代に、私と一緒にサッカー部のマネージャーをしていた友人、荒木美空。今は結婚して、五十嵐美空となっている。因みに彼女の夫は、ずっと交際していたあのキャプテンだ。
「ごめんね、急に誘って」
「ううん、全然。旦那も当直だしちょうどよかった」
三ヶ月ぶりくらいだろうか。彼女とは結婚後も、ちょくちょく交流を持っている。夫同士も友人ということも、大きいだろう。四人で集まったことも何度もある。
今日は美空お気に入りの肉バルで、赤ワインの注がれたグラスをかちんと合わせた。この店にしようと提案したのは、私だ。
「五十嵐先輩、忙しいの?」
「まぁ、ぼちぼちかな。刑事課だし、出掛けた先で呼び出しなんかしょっ中よ」
「そうなんだ。大変だね」
五十嵐先輩は、正義感と統率力のある人だと思う。何かと目立っていた美空のことも、昔からとても大切にしている。
「それにしても茜から飲みの誘いなんて珍しいね。三笹先輩は飲み会?」
「そう、取引先の人とね。丁度同い年で気が合うんだって」
「ふうん」
別に《《予定作り》》に美空を利用した訳ではないけれど。これで二條さんに言ったことは、嘘ではなくなった。
「ねぇ聞いてよ。お義母さんからまた言われちゃってさ」
料理とアルコールが進むにつれ、美空の口が滑らかになる。ナイフで大きめに切ったステーキに、ぶすりとフォークを突き刺した。
「子供のこと?」
「そう。ウチは男側の問題だって何回も言ってるのに、なんで毎回私に言ってくるんだろ。頭おかしいのかな」
「デリケートな問題だし、例え親にだってあれこれ言われたくないよね」
「茜が羨ましいよ」
口煩い姑を持つ美空からすれば、確かにそうかもしれない。私達には、出しゃばってくる親も親戚もいないから。
家族は、お互いだけだ。
「茜のところは最近どう?」
「ウチはまぁ、妊活とも言えないくらい緩くやってるだけから」
「ごめんごめん、あんまり話したくないんだったね。話題変えようか」
気遣うような彼女の言葉に、私は曖昧に笑う。
私達夫婦は、子供が出来ないのではない。
要らないのだ。
「ごめんね、急に誘って」
「ううん、全然。旦那も当直だしちょうどよかった」
三ヶ月ぶりくらいだろうか。彼女とは結婚後も、ちょくちょく交流を持っている。夫同士も友人ということも、大きいだろう。四人で集まったことも何度もある。
今日は美空お気に入りの肉バルで、赤ワインの注がれたグラスをかちんと合わせた。この店にしようと提案したのは、私だ。
「五十嵐先輩、忙しいの?」
「まぁ、ぼちぼちかな。刑事課だし、出掛けた先で呼び出しなんかしょっ中よ」
「そうなんだ。大変だね」
五十嵐先輩は、正義感と統率力のある人だと思う。何かと目立っていた美空のことも、昔からとても大切にしている。
「それにしても茜から飲みの誘いなんて珍しいね。三笹先輩は飲み会?」
「そう、取引先の人とね。丁度同い年で気が合うんだって」
「ふうん」
別に《《予定作り》》に美空を利用した訳ではないけれど。これで二條さんに言ったことは、嘘ではなくなった。
「ねぇ聞いてよ。お義母さんからまた言われちゃってさ」
料理とアルコールが進むにつれ、美空の口が滑らかになる。ナイフで大きめに切ったステーキに、ぶすりとフォークを突き刺した。
「子供のこと?」
「そう。ウチは男側の問題だって何回も言ってるのに、なんで毎回私に言ってくるんだろ。頭おかしいのかな」
「デリケートな問題だし、例え親にだってあれこれ言われたくないよね」
「茜が羨ましいよ」
口煩い姑を持つ美空からすれば、確かにそうかもしれない。私達には、出しゃばってくる親も親戚もいないから。
家族は、お互いだけだ。
「茜のところは最近どう?」
「ウチはまぁ、妊活とも言えないくらい緩くやってるだけから」
「ごめんごめん、あんまり話したくないんだったね。話題変えようか」
気遣うような彼女の言葉に、私は曖昧に笑う。
私達夫婦は、子供が出来ないのではない。
要らないのだ。