合意的不倫関係のススメ
二條さんも私と同じように休日出勤だったらしく、私達はそのまま百貨店の外へ出た。そこで別れ蒼に連絡しようと思っていたところで、人影が近づいてくる。
「茜、お疲れ様」
「あれ、蒼」
「なんとなくもうすぐかなと思って、この辺うろうろしてた」
優しく目を細め、同じく穏やかな声色でそう口にした彼は、そのまま私の隣にいる二條さんに視線を向けた。
「初めまして。茜の夫の三笹蒼です」
「あっ、どうも!同期の二條です」
二條さんも人当たりの良さそうな笑みを浮かべ、持ち前のコミニュケーション能力を発揮している。
「実は何度かお見かけしてました。同期会に迎えにきているのを見て、仲良いなっていつも皆で話してたんですよ」
「そうなんですか。何だか恥ずかしいな」
(二人が話してる。不思議)
二條さんと蒼がもしも同じ会社だったら、果たして仲がいいのだろうか。どちらも表面上は柔らかで付き合いやすそうだけれど、腹の底では何を考えているのか分からない。
それに二條さんは女性に対して軽い面もありそうだし、蒼の苦手なタイプかもしれない。
なんて、意味のないことを考えた。
「…ですか、ぜひ!ねぇ、三笹さん!」
「…えっ?」
ぼうっとしていて、二人の会話が進んでいることに気が付かなかった。
「今日のお詫びにご馳走様させてよ三笹さん。もちろん旦那さんも一緒に」
「ああ、そういうことですか。言ったじゃないですか、気にしないでくださいって」
「それじゃ俺の気が済まないんだって!それに、蒼さんとももっと話したいし」
(蒼さんって…)
呆れる程に人との距離を詰めるのが早い。流石外商部、というのが関係するのかどうかは知らないけれど。
しつこい二條さんに困り、蒼から断ってほしいと思ってちらりと彼を見上げる。私の思いとは裏腹に、蒼はにこりと笑って頷いた。
「俺は構わないよ、全然」
「……」
珍しい。蒼は大体言わなくても私の感情を読み取ってくれるのに。行きたくないと思っていることが、伝わらなかったのだろうか。
「よし決まり!この間お客さんに教えてもらった丁度いい店があるんだよ!」
「……はぁ」
もう私は、溜息を隠すことを辞めた。
「茜、お疲れ様」
「あれ、蒼」
「なんとなくもうすぐかなと思って、この辺うろうろしてた」
優しく目を細め、同じく穏やかな声色でそう口にした彼は、そのまま私の隣にいる二條さんに視線を向けた。
「初めまして。茜の夫の三笹蒼です」
「あっ、どうも!同期の二條です」
二條さんも人当たりの良さそうな笑みを浮かべ、持ち前のコミニュケーション能力を発揮している。
「実は何度かお見かけしてました。同期会に迎えにきているのを見て、仲良いなっていつも皆で話してたんですよ」
「そうなんですか。何だか恥ずかしいな」
(二人が話してる。不思議)
二條さんと蒼がもしも同じ会社だったら、果たして仲がいいのだろうか。どちらも表面上は柔らかで付き合いやすそうだけれど、腹の底では何を考えているのか分からない。
それに二條さんは女性に対して軽い面もありそうだし、蒼の苦手なタイプかもしれない。
なんて、意味のないことを考えた。
「…ですか、ぜひ!ねぇ、三笹さん!」
「…えっ?」
ぼうっとしていて、二人の会話が進んでいることに気が付かなかった。
「今日のお詫びにご馳走様させてよ三笹さん。もちろん旦那さんも一緒に」
「ああ、そういうことですか。言ったじゃないですか、気にしないでくださいって」
「それじゃ俺の気が済まないんだって!それに、蒼さんとももっと話したいし」
(蒼さんって…)
呆れる程に人との距離を詰めるのが早い。流石外商部、というのが関係するのかどうかは知らないけれど。
しつこい二條さんに困り、蒼から断ってほしいと思ってちらりと彼を見上げる。私の思いとは裏腹に、蒼はにこりと笑って頷いた。
「俺は構わないよ、全然」
「……」
珍しい。蒼は大体言わなくても私の感情を読み取ってくれるのに。行きたくないと思っていることが、伝わらなかったのだろうか。
「よし決まり!この間お客さんに教えてもらった丁度いい店があるんだよ!」
「……はぁ」
もう私は、溜息を隠すことを辞めた。