合意的不倫関係のススメ
先程の彼・二條俊成と私は、歳は違えど同期入社だ。高卒で就職した私とは違い、彼は都内の有名大学出身。噂によれば、実家も資産家だとか。
そんな完璧人間と私、普通なら例え同期でも関わることはないだろう。
なぜ彼が私に声を掛けてくるようになったかといえば、それは仕事での一件があったから。
入社当時からこの売り場にいると、固定客の顔と名前、どんな時期にどんな品物を注文するのかということは、大体把握している。
それが外商部からの大口注文であれば尚更で、二條さんが担当している顧客から毎年注文が来る時期になっても彼から連絡がないことに疑問を感じた私は、少し躊躇いながらも確認の連絡を取った。
「余計なお世話だ」と言われることを覚悟していたけれど、この私の電話が意外にも彼を救ったようで。例年と同じようにその顧客から注文を受けていたのをすっかり忘れていた二條さんは、私のお陰で大ごとにならずに済んだととても感謝をした。
それからというもの彼は、和菓子での注文があれば必ず私に連絡するようになったし、見かければ声を掛けてくるようにもなったというわけだ。
「だって、三笹さんが言ってくれなかったらマジでヤバかったし。かなり大口のお客様だし結構気難しい人だから、下手したらどっか地方に飛ばされてたかも」
そう言って笑った彼の笑顔は、人懐っこい大型犬のように可愛らしくて。
なるほどこれは人たらしだと、その時妙に感心したのを今でも覚えている。
周囲はきっと、思っていることだろう。どうして二條さんのような魅力的な人が私に…と。
実際一部の女子社員達からは、冷ややかな目線を向けられていることも知っている。
けれど、どうこうするつもりはない。
仕事が円滑に周りさえすれば、私にとってはどうでもいいことだから。
そんな完璧人間と私、普通なら例え同期でも関わることはないだろう。
なぜ彼が私に声を掛けてくるようになったかといえば、それは仕事での一件があったから。
入社当時からこの売り場にいると、固定客の顔と名前、どんな時期にどんな品物を注文するのかということは、大体把握している。
それが外商部からの大口注文であれば尚更で、二條さんが担当している顧客から毎年注文が来る時期になっても彼から連絡がないことに疑問を感じた私は、少し躊躇いながらも確認の連絡を取った。
「余計なお世話だ」と言われることを覚悟していたけれど、この私の電話が意外にも彼を救ったようで。例年と同じようにその顧客から注文を受けていたのをすっかり忘れていた二條さんは、私のお陰で大ごとにならずに済んだととても感謝をした。
それからというもの彼は、和菓子での注文があれば必ず私に連絡するようになったし、見かければ声を掛けてくるようにもなったというわけだ。
「だって、三笹さんが言ってくれなかったらマジでヤバかったし。かなり大口のお客様だし結構気難しい人だから、下手したらどっか地方に飛ばされてたかも」
そう言って笑った彼の笑顔は、人懐っこい大型犬のように可愛らしくて。
なるほどこれは人たらしだと、その時妙に感心したのを今でも覚えている。
周囲はきっと、思っていることだろう。どうして二條さんのような魅力的な人が私に…と。
実際一部の女子社員達からは、冷ややかな目線を向けられていることも知っている。
けれど、どうこうするつもりはない。
仕事が円滑に周りさえすれば、私にとってはどうでもいいことだから。