戻り駅
戻り駅の噂
「今日って良治休みなんだね」
朝の二年C組の教室内。
友人の永嶋美紗(ナガシマ ミサ)が教室内を見回してから私にそう声をかけてきた。
「本当だね。夏風邪でもひいたんじゃない?」
「元気だけが取り得の良治が風邪なんてひいてほうすんのよぉ」
美紗は呆れ顔になって前髪をかきあげた。胸まであるストレートの髪が天使の輪を作って輝いている。
目を細めて良治の席を見つめるその姿は同じ十七歳とは思えないくらいに色気を感じて、友人である私でも心臓が跳ねてしまった。
「おはよ」
美紗に気を取られている間に同じクラスの本井誠(モトイ マコト)が教室に入ってきていたようで、後ろから声をかけられた私は
椅子の上で数センチ飛び上がってしまった。
「お、おはよう」
ふりむいてどぎまぎしているのを悟られないように笑顔で答える。
しかし驚きは顔に出ていたようで、誠はけげんそうな表情を私へ向けた。
「なんだよ、そんな顔して」
指摘されて両手で自分の顔を包み込む。
そんなに変な顔をしていただろうか。
「おはよう誠。いいなぁ二人はいつまでもラブラブで」
美紗が私たちを見て頬を膨らませている。
そんな美紗を見て私と誠は顔を見合わせた。
私たちが付き合い始めたのは二年生に上がり、同じクラスになってからだった。それまでもお互いの存在は知っていたものの、挨拶程度の関係だった。
朝の二年C組の教室内。
友人の永嶋美紗(ナガシマ ミサ)が教室内を見回してから私にそう声をかけてきた。
「本当だね。夏風邪でもひいたんじゃない?」
「元気だけが取り得の良治が風邪なんてひいてほうすんのよぉ」
美紗は呆れ顔になって前髪をかきあげた。胸まであるストレートの髪が天使の輪を作って輝いている。
目を細めて良治の席を見つめるその姿は同じ十七歳とは思えないくらいに色気を感じて、友人である私でも心臓が跳ねてしまった。
「おはよ」
美紗に気を取られている間に同じクラスの本井誠(モトイ マコト)が教室に入ってきていたようで、後ろから声をかけられた私は
椅子の上で数センチ飛び上がってしまった。
「お、おはよう」
ふりむいてどぎまぎしているのを悟られないように笑顔で答える。
しかし驚きは顔に出ていたようで、誠はけげんそうな表情を私へ向けた。
「なんだよ、そんな顔して」
指摘されて両手で自分の顔を包み込む。
そんなに変な顔をしていただろうか。
「おはよう誠。いいなぁ二人はいつまでもラブラブで」
美紗が私たちを見て頬を膨らませている。
そんな美紗を見て私と誠は顔を見合わせた。
私たちが付き合い始めたのは二年生に上がり、同じクラスになってからだった。それまでもお互いの存在は知っていたものの、挨拶程度の関係だった。
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