戻り駅
「元々母子家庭だ」


 私の次の言葉を察して良治は答えた。


「入院費も生活費もバカにならなくて、でも俺どうすればいいか全然わからなくてさ。


途方にくれて母親のお見舞いから帰ってる途中、男たちに声をかけられたんだ」


「それが、銀行強盗集団?」


「あぁ」


「でも、どうしてその人たちは良治に声をかけたの?」


 偶然にしてはできすぎている。


「元々俺に目をつけていたらしい。金に困っていて血の気の多いやつ。どうやって俺のことを調べたのかはわからないけれど、ああいう連中の情報網はバカにならないからな」


「お金に困っている人たちなら他に沢山いるはずなのに?」


「高校生がよかったらしい。理由はわからないけど」


 銀行強盗に加担しなかった良治はピンときていないようだけれど、私はすぐに理解した。


高校生とコネクションを持っておきたかったのだろう。そうすることで女子高生を手に入れる手段も手に入るから。


 私はもう少しでそういうやつらの餌食にされていたのだと思うと、全身に鳥肌が立って吐き気がした。


 ここへ来るまでの間に誠からいろいろと聞いて、消えていた記憶が戻ってきていたのだ。


「コンビニバイトだけでどうにかなるの?」
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