戻り駅
☆☆☆

　学校の校門前が見えてきたとき私の歩調は自然とゆっくりになっていた。


　横断歩道は青信号で、同じ制服を着た生徒たちが次々と渡っていく。


　車は停止線の手前で止まっていてどれも動く気配はない。それを確認して少し安堵してから私は横断歩道を渡り始めた。


　半分ほど歩いたところで青信号が点滅しはじめて、早足になる。そしてもう数歩で校門にたどり着くと言うときだった。


　不意に曲がり角から白い車が猛スピードで走ってきて、私の体は硬直してしまった。


　白い車はスピードを緩めることなくこちらへ向かってきている。


　一瞬にして誠の死に顔を思い出していた。


　脳みそが飛び出ていたり、内蔵が飛び出ていたりしたあの光景。


　体がガタガタと震えだし、冷や汗が背中を伝って落ちていく。


　信号機が変わる前に渡りきろうとした生徒たちが私の横を駆け抜けていく。


　スピードを落とさない白い車がその生徒たちの中へ突っ込んでいく映像が脳裏に流れたとき、強く手をひかれていた。


「ぼーっとしてどうした？」


　その声に顔をあげると誠が立っていた。


「え、あ……」
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