戻り駅
☆☆☆

 それから二度目の数学の授業を受け、二度目の終わりのホームルームを終えたとき誠が近づいてきた。


「琴音、一緒に帰ろう」


 そのセリフに心臓が跳ねた。さっきと全く同じタイミングだ。


「う、うん」


 私はぎこちなく頷くと鞄を持って廊下へ出た。


 廊下の先には美紗の後姿が見える。


「ごめん、私数学のプリントを持ってくるの忘れちゃった」


 その言葉は自然と口をついて出てきた。


誠が立ち止まり、「じゃ、教室に戻ろうか」と声をかけてくる。


「うん」


 私は頷き、誠と一緒に教室へと戻った。


 机の奥を覗き込むと、そこにクシャクシャに丸まった数学のプリントがあった。


「あ~あ、破れてんじゃん」


 誠が笑いながらプリントのシワを伸ばしてくれる。


「ごめん。ありがとう」


 少しだけマシになったプリントを受け取り、鞄に入れると私たちは肩を並べて歩き出した。


さっきとは違う状況。


 事故が起こると知っている私が一緒にいれば、きっと大丈夫だ。


 ふたりで他愛のない会話をしながら校門を抜けると、横断歩道の信号はちょうど青に変わったところだった。


 美紗が歩いていく後姿が見える中、私は思わずその場に立ち止まっていた。
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