戻り駅
「誰か救急車を! 早く!」


 近くにいる誠の叫び声が遠くのほうで聞こえてくる。


 なんで……。


 どうして?


「琴音大丈夫か? しっかりしろ」


 誠に声をかけられても返事ができなかった。


 誠の事故を回避したせいで、美紗が……?


 違う。


 こんなの違う!


 私は無意識のうちに差し出された誠の手を振り払い、駅へ向けて走り出していたのだった。
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