戻り駅
「まぁ、二人がそれでいいなら、私もいいけど」


「じゃあ決まりね」


 私はそう言うと、一度自分の席へ戻って時間を確認した。


 事故が起こるまであと五分程度だ。


 ゆっくりと鞄に教科書を入れて、最後に数学のプリントを引っ張り出す。今回は気をつけていたためそこまでシワだらけにはなっていなかった。それを見てかすかに笑ってしまう。こんなところがうまく行っても意味なんてないのに。


 変わってほしいところが変わらなくて、どうでもいいようなことが変わっていく。それは誰かに仕組まれていることのように感じられて、私は下唇をかみ締めた。


 それでもやるしかない。


 三度目の正直という言葉もあるくらいだから今度こそうまく行く。そう信じて行動するしかなかった。


 問題の五分を過ぎてようやく席を立つと、教室から窓の外を確認してみた。


 大通りに行きかう車が見えているが問題の暴走車は見当たらない。今なら安全かもしれない。


 そう思ったとき緑色の歩道橋が視界に入った。


そこにあることは知っていたけれど、横断歩道もあるのでわざわざ使う生徒はほとんどいない場所だ。


 そうだ、今回は歩道橋を使ってみよう。


 二人とも横断歩道を渡っているときに車にはねられているのだから、これで事故を回避することができるかもしれない!


 問題の横断歩道までやってきて、私は二人に声をかけた。
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