戻り駅
☆☆☆


 次は何時間前で下車するか。


 そんなことも考えられなくなっていた。


 ただ椅子に座り、祈るように胸の前で手を組んで発狂してしまいそうになるのをひたすら我慢するしかない。


 イライラと右足を動かして貧乏ゆすりを繰り返し、外の景色を見る余裕だってなかった。


「どうしようどうしようどうしようどうしよう」


 犯人はわかった。だけど彼らは用意周到に誠を殺す計画を立てていた。


 きっと、今回計画がダメになったとしてもすぐに諦めることはないだろう。


 もっと根本的なところから事故の詳細を知って、解決させていかないと意味はないのかもしれない。


 でも、根本的なところってどこ?


 そこまで考えたときサッと頭の中が真っ白になった。


 そうだよ、そもそも誠を殺す原因ってなに?


 スーッと音が鳴るように全身から血の気は引いていくのを感じる。


 車窓から外を見ると相変わらず麦畑が広がっていて、今どのくらい走ったのかもわからなかった。


 私はどこまで戻って、どこから解決していけばいいの?


 そう考えた瞬間、汽車が次の駅で停車した。


「五時間前駅~五時間前駅~」
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