戻り駅
ピンクの精霊の声が聞こえてきて、私は促されるようにして席を立った。


 随分長く乗車していたような気分だけれど、まだほんの二十五分だったようだ。


 ふらりふらりと体を左右に揺らしながら下車すると、相変わらず剥げた看板が視界に入った。


 この路線では剥げていない、新しい看板を掲げられているヶ所はないんだろうか。


「大丈夫?」


 後ろから声をかけられて振り向くと、黄色い精霊が不安そうな表情で近づいてきた。


「……うん、大丈夫」


 心ここにあらずで返事をした。


 今日一日で誠が死ぬ様子を何度見ただろうか。私の心はすでに限界に近づいてきていた。


これ以上誠の悲惨な姿を見たくない。もちろん美紗の悲惨な姿だって……いっそ、私が二人の代わりになれればいいのに。


 真っ白になった頭でそう考えて、また涙が浮かんできてしまった。


 こらえきれずにボロボロと頬を流れ始める。


「ねぇ、もう無理しなくていいんじゃない?」


 黄色い精霊は私の頬に流れる涙を手でぬぐいながら言った。


 小さな精霊にとって涙一粒でも両手は一杯だ。


「本当に、大丈夫だから」


 声が震えた。体も小刻みに震え始めている。
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