戻り駅
☆☆☆
二階まで駆け上がり、誰もいないC組にかけこんだ。
自分の席まで走ってようやく足を止めると、机の奥のほうにクシャクシャに丸まってしまった数学のプリントがあった。
「あ~あ、敗れちゃってる」
他の教科書やノートに押しつぶされたそれに小さくため息を吐き出した。
要領のいい子はとっくにプリント用のファイルなどを使っているが、面倒くさがりな私はいまだにファイルを使っていなかった。だからこんなことになるんだ。
机の上でプリントを伸ばしてから鞄に入れると、すぐにまた走り出した。
先に行っててと伝えてあるが、誠のことだから待っているに決まっている。
階段を一気に駆け下りて大慌てで靴を履き替えて外へ出る。
帰宅する生徒たちの間を縫うようにして校門まで戻ってきたとき、案の定誠は横断歩道の前で待っていた。
「誠!」
声をかけてから、誠と離れた場所に美紗も立っているのが視界に入った。二人とも結局信号機でひっかかったみたいだ。
横断歩道の信号が青に変わり、美紗が振り向いて誠へ片手をあげ、歩き出す。
誠も同じように片手をあげて見せた。その直後だった。
突然白い車が猛スピードで近づいてくるのが見えた。その車は信号機の色なんて見ていなくて、蛇行しながら誠へ近づいている。美紗が驚いた顔をして歩道の真ん中で立ち止まった。誠は逃げ出そうと身を翻したが、一瞬遅かった。
二階まで駆け上がり、誰もいないC組にかけこんだ。
自分の席まで走ってようやく足を止めると、机の奥のほうにクシャクシャに丸まってしまった数学のプリントがあった。
「あ~あ、敗れちゃってる」
他の教科書やノートに押しつぶされたそれに小さくため息を吐き出した。
要領のいい子はとっくにプリント用のファイルなどを使っているが、面倒くさがりな私はいまだにファイルを使っていなかった。だからこんなことになるんだ。
机の上でプリントを伸ばしてから鞄に入れると、すぐにまた走り出した。
先に行っててと伝えてあるが、誠のことだから待っているに決まっている。
階段を一気に駆け下りて大慌てで靴を履き替えて外へ出る。
帰宅する生徒たちの間を縫うようにして校門まで戻ってきたとき、案の定誠は横断歩道の前で待っていた。
「誠!」
声をかけてから、誠と離れた場所に美紗も立っているのが視界に入った。二人とも結局信号機でひっかかったみたいだ。
横断歩道の信号が青に変わり、美紗が振り向いて誠へ片手をあげ、歩き出す。
誠も同じように片手をあげて見せた。その直後だった。
突然白い車が猛スピードで近づいてくるのが見えた。その車は信号機の色なんて見ていなくて、蛇行しながら誠へ近づいている。美紗が驚いた顔をして歩道の真ん中で立ち止まった。誠は逃げ出そうと身を翻したが、一瞬遅かった。