戻り駅
「それは……」


 どう誤魔化そうか考えている間に白い車が近づいてきた。何度も誠を引いて、何度も誠を殺した車だ。


 その車を見た瞬間息がつまり、動機と吐き気を感じて電信柱に寄りかかった。


 自分の体から血の気が引いていく感覚がして、全身が氷点下のように冷たくなる。油断すると足元から崩れ落ちてしまいそうだった。


 白い車は真っ直ぐに空き地へ入ると、続いて黒い服の男が降りてきた。


 浅黒い肌のその男はすでに眉間にシワを寄せ、怒っている様子でこちらに近づいてくる。


 その瞬間良治が緊張したように背筋を伸ばすのがわかった。


「どうしてこの女がここにいる」


 真っ直ぐやってきた男が野太い声で良治に聞く。


「計画のことは誰にも話さない約束だっただろ」


「わ、わからないんだ。俺がここに来たとき、もうこいつはここにいた」


 良治はしどろもどろになりながら私を指差して言った。


「しかも、計画のことを知ってるみたいなんだ。もちろん、俺はしゃべってない!」


 誤解を解くために良治は随分と早口になっていた。そのくらいこの男のことが怖いのだろう。


「なんだと?」


 男の視線がこちらへ向けられて、私は思わず後ずさりをした。


 男の小さな目なんて怖くないはずなのに、全身を貫く鋭利な刃物のように感じられた。


「お前、誰からこの計画について聞いた?」
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