戻り駅
☆☆☆

「どうしたんだよ急に?」


 六時間目が終わった後、誠が首をかしげながら聞いてきた。


 片手にはスマホを握り締めているから、授業前に送ったあのメッセージのことを言っているのだとすぐにわかった。


「うん……なんとなく、二人の関係が気になって」


 本当のことは言えないから、誤魔化しながら答える。


「なんだそれ」


 誠は更に首をかしげている。


「ねぇ、良治とは本当に仲良しなんだよね? 別に、喧嘩とかしてないんだよね?」


「喧嘩なんてしてないよ。いつもどおり」


「そっか……」


 誠が嘘をついているようには見えない。この頃はまだなんの問題もなかったのかもしれない。


「どうしてそんな風に思ったんだよ?」


「ううん、なんでもないの。ごめんね」


 私はうつむき、そう言うしかなかったのだった。


 誠のことは信用している。だけど問題が起こったときに片方だけから話を聞いて決め付けるのは一番こわいことだった。


「良治!」


 その日の放課後、私は一人で教室を出て行こうとしている良治を後ろから呼び止めた。


「なに?」


 良治は少し驚いたように目を丸くして私を見る。こうして良治と二人で会話したことはないから、驚いても不思議ではなかった。
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