戻り駅
 昼休憩に入ったとき、私は良治に近づいて行った。


 今までスマホを出して操作していた良治がすぐに気がつき、スマホをポケットの中に隠した。


「なに?」


 良治が笑顔を浮かべて聞いてくるが、その表情が少しだけ無理しているように感じられた。元々不信感を持って良治を観察している私だからこそ、そう見えてしまっただけかもしれない。


「さっきから誰とメッセージしてるのかなて思って」


「メッセージなんてしてないよ」


「本当に? でもスマホを隠しているよね?」


 聞くと良治は軽く舌打ちをして、私から視線を外した。


「あぁ……実は、他校の彼女とメッセージをしてたんだ」


 その言葉に私は驚いて目を見張った。良治に彼女がいたのは初耳だ。


「そうなの! でも私、良治に彼女がいるなんて初めて知ったよ」


「まだ付き合って日が浅いから、誰にも話してないんだ」


「へぇ。誠にも?」


 不意に誠の名前が出てきたことに驚いたようで、良治はくちごもった。


「あぁ、誠にも、まだだけど」
< 67 / 116 >

この作品をシェア

pagetop