戻り駅
「だったら私からのメッセージなんて気にしなくていいよ。どうでもいいような内容だったし」


「そっか」


 自分から話しかけてきたわりに返事に困っているのがわかる。


 それでも良治は自分の席へ戻るつもりはないようで、ジッと私の席の隣に立っている。


 そんな良治を見ていると、そういえば一度目のときも同じようなことがあったと思い出した。その時は前日に良治にメッセージをしたりしなかったので、会話の内容はもっぱらテレビ番組のことだった。そんな雑談は良治とほとんど交わしたことがないので、私は幾分戸惑っていたのだ。それと同じことが今回も起こっている。


 そうだ。


 前回はその様子を見た誠が気にして声を欠けてきたんだ。


 そこまで思い出したとき、誠が教室に入ってきた。


「なんだよ、珍しい組み合わせだな」


 誠は私たちを見るとすぐに近づいてきた。


「あぁ、誠……」


 良治はばつが悪そうな表情を浮かべて頭をかく。


「昨日の授業のことで話しをしてたの」


 私はすぐに良治をフォローした。


 今回良治が話しかけてきたのは昨日のメッセージの影響が大きかったはずだからだ。


「それなら俺も混ざれるな」


 誠はそう言って空いている席から椅子をもってきて座った。


 すぐに自分の席に戻るわけにはいかなくなった良治は苦笑いを浮かべてうなづいたのだった。
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