戻り駅
 確かに今日は会話の数が多かったけれど、ただそれだけ。そんなそぶりをうかがうこともできなかったし。


「別になんでもないよ。授業や宿題についてメッセージをもらったから、返事をしただけだ」


 良治の返事はそっけなく、声色は冷たい。どこか怒っているようにも思えて、隣の誠は戸惑っている。


「本当にそれだけか?」


「何度言わすんだよ」


 良治は大きなため息を吐き出す。


これ以上突っ込めば完全に怒らせることになるとわかったのか、誠は「悪かったよ」と、折れた。


 雰囲気は険悪なものだったけれど、それからは他愛のない会話ばかりを繰り返し、結局何事もなく家にたどり着いていた。


 私は誠も良治の自分の家に戻ったことを確認してから、帰路へついた。


 結局この日もなにもわからなかった。


 良治が誰とメッセージをしていたのか、その内容を知ることができればなにか変わるのかもしれないけれど、警戒している良
治のスマホを盗み見ることは簡単じゃなさそうだ。


なにもわからないまま一週間が過ぎてしまうんじゃないか。そんな不安を感じるようになった五日目の朝がきた。
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