戻り駅
☆☆☆

 そして、今日。


 良治は学校に来なかった。


 風邪だということだったけれど、おそらく嘘だということはすぐにわかった。


 良治には計画しなければならないことが山のようにあるはずだし、仲間に呼び出されている可能性もあった。


 そんなとき、琴音が良治とメッセージをしているのを偶然見かけて気が気じゃなくなっていた。良治はメッセージの中で琴音をデートに誘っていた。


 もちろん琴音は断るだろうが、ついに魔の手が伸びてきたと感じた。


 午前中の授業が終わってすぐ俺は大急ぎで教室を出た。


 そのまま良治の家に向かい、すべてを知っていると暴露するつもりだった。


 そうすれば良治は琴音を狙うことができなくなるという、安直な考えだった。


 もちろん早退することは誰にも言わない。


 俺が早退するとなれば、琴音に無駄な心配をさせてしまうからだ。


 そうして一人良治の家にやってきたとき、玄関先に白い車が停車しているのが見えた。見たことのない、色の黒い男が運転席に乗っている。


 影から様子を伺っていると玄関から良治が姿を現し、車の後部座席へと乗り込んだ。二人を乗せた車はそのまま発進し、どこかへ向かう。


 一旦車を見送った俺はすぐに良治の家の車庫へ身を滑り込ませた。そこには良治が普段使っている自転車がある。幸いにも鍵が欠けっぱなしにされていたので、俺はそれにとびのだった。


 そして白い車の後を追いかけて走り出したのだった。
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