戻り駅
 良治が俺の姿に驚いて目を見開き、運転手の男はくわえタバコで怪訝そうな顔を浮かべている。


「話は全部聞かせてもらった。銀行強盗の犯人はお前たちだな」


 強い口調で言ったつもりだったが、声は情けないくらいに震えていた。


 銀行強盗の上女子高生を金にしようなんて考えている連中のことだ、今ここで自分が拉致られて、口封じのために殺されてしまう可能性だってある。


 足は微かに震えていて、額につめたい汗が流れていった。


「誠、なんでお前、ここに!」


 良治が驚きのあまり途切れ途切れに言う。


 運転手の男は特に反応を見せることもなく、タバコを吸い続けている。その余裕の様子が俺には怖かった。


 だけどここで引き返すわけにはいかない。


 琴音を誘拐する計画をどうしても中止させないといけない。


「琴音のことを黙っていてくれれば、お前らが犯人だってことは誰にも言わない」
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