戻り駅
 だけどどうしてか、誠を助け出した記憶だけは残っていなかった。


 パニック状態になった私はパジャマ姿のまま部屋を駆け出した。


 スマホを使って誠に連絡するのが一番早いのに、そこまで頭が回らなかった。とにかく誠の家に行って誠が生きているかどうか確認しなきゃいけない。


 そして、なにが起こったのか聞く必要がある。


 パジャマのまま玄関ドアを大きく開いたそのときだった。


 目の前に人が立っていて危うくぶつかってしまいそうになり、慌てて足に急ブレーキをかけた。


「誠!?」


 目の前に立っていた人物は誠だったのだ。見間違うはずもない、誠その人。


「琴音おはよう」


 誠は何事もなかったかのように挨拶をしてくる。


 それでも私は返事ができなかった。


 誠の頬に触れて、手に触れて、ようやくそれが実態を持った誠であると理解できた。


「なんで、誠、なんで!?」


「混乱しているはずだと思って朝一番に来て正解だったよ。ちゃんと説明する」


 誠はそう言い、私の手を強く握り締めたのだった。
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