魅惑な副操縦士の固執求愛に抗えない
多分、私が同じ女性で、話しかけやすかったのだろう。
それから顔を合わせると立ち話するようになり、同い年と知って意気投合した。


でも、杏子ちゃんのことは彼女から聞いて顔と名前を知ってるだけで、私は直接友達ではない。
そしてその杏子ちゃんは今、私から一番遠く離れた端っこの席で、やたら顔がいい副操縦士を他の女性たちと一緒に取り囲んでいる。


「わ、すご~い。ほんとですか?」


なあんてキャピキャピ弾んだ声が聞こえてくるし、とてもあそこに近寄る気分にはなれない。
せっかく来たからには、他のお仕事の話が聞きたい。
聞きたいけど、一つ席を置いた隣で楽しそうに会話しているのは男性三人。
女一人という環境に慣れてはいても、さすがに知らない男性グループの中には入っていけない。


かと言って、飲み会が終わるまで、こうしてテーブルの木目を眺めているだけじゃ、女性四千円の会費がもったいない。
だったら、せめて食べて飲むか。
いや、食事をするだけなら、ここにいる時間ももったいない。
――帰って、家でご飯食べながら、佐伯さんに借りた航空工学のDVDが観たいな……。
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