魅惑な副操縦士の固執求愛に抗えない
「でも、今野さんは佐伯さんの彼女だから。私を身代わりにしたいだけでしょ? だけど私は今野さんの代わりになんかなれないし、そんなの嫌って言いたくて……」

「違う!」


俺が鋭く言葉を挟むと、椎名は声を喉に詰まらせた。
俺は彼女の咎めるような視線から逃げ、面を伏せる。


「誰かの代わりとかじゃない。俺はお前を……椎名芽唯を抱きたい」


噛みしめるように呟き、ブルッと頭を振った。
すぐ額の先から、彼女が息をのんだ気配が伝わってくる。


――ああ、そうだ。
俺は今、堪らなく椎名を抱きたい。
力ずくにしてでも、彼女の身も心も全部、欲していることを自覚した。
自分の中に芽生えた激しい情欲に焚きつけられ、心臓がドクッと沸き立つ。


「嫌なら、この間みたいに全力で抵抗しろ」


欲情する自分に困惑して揺れる心を断ち切るつもりで、横柄に言い捨てて再び彼女の唇を奪った。


「あ、ふっ……ん」


キスの隙間で漏れる声に、背筋がゾクゾクと痺れる。
逸る気分で、彼女の胸に触れた。


「あっ!!」


椎名がバチッと目を開け、腰を跳ね上げる。


「やっ……ダメ、神凪さ」

「その程度の抵抗じゃ、やめてやれないよ。……芽唯」
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