魅惑な副操縦士の固執求愛に抗えない
確かに、日常的な点検整備を行うライン業務に就く運航整備士は、フライト前のシステム点検でコックピットに入るし、機長席に座ることもあれば操縦桿を握ることもできる。
そうなるためには、まず一等航空整備士の国家資格を取り、確認主任者という社内審査に合格しなければならない。
ちなみに、私は今年一等航空整備士に合格したばかりで、駐機スポットでの運航整備業務を勉強中だ。


まあ、私のことは置いておいても、あなた、操縦桿を握るどころか、操縦もできる副操縦士でしょうが。
なんで「航空整備士」だなんて、ホラ吹いちゃってんの!?


合コンの場で、周りに侍らせた女性に「スマートなパイロットの方がイメージ」なんて言わせておいて、まさに副操縦士のくせに。
わざわざ航空整備士を騙ること自体意味不明だし、女性を、私たち整備士を馬鹿にしてる。


この人、この合コンに一体なにしに来たの?
目の前が『?』一色で占められた時、嘘つきパイロットが「ああ」と声を上げた。


「ほら。ようやく本物のパイロットの登場ですよ」


彼がみんなの視線を誘導した先には、私も見知っている副操縦士がいた。
遅れてきた副操縦士は、女性の視線を一気に浴びて、一瞬面くらったようにたじろいだものの。
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