魅惑な副操縦士の固執求愛に抗えない
「……もしかして」


なにか思い当たったような口振りで、私の方に身体を傾け、


「昨夜の余韻に浸ってた、とか?」


コソッと耳打ちしてくる。


「! ちょ、近いです」


私はギョッとして、窓ギリギリまで身を寄せて逃げた。
彼の額を押して、間隔を保とうとすると。


「いてっ。おい」


神凪さんはムッと顔を歪めたものの、すぐにニヤリと笑った。


「ベッドでは可愛いかったのにな」


意地悪に囁きかけられ、私の心臓が飛び跳ねる。
一瞬にして熱を帯びる耳を、とっさに手で隠し……。


「そうやってすぐからかうの、やめてください」

「だから、なんでそう決めつけるんだよ」


神凪さんは、不服そうに唇を曲げた。


「本心だよ。朝になったらスイッチ切り替わっちゃって、ほんと残念」

「それを言ったら、神凪さんだって」


私は反射的に言い返そうとして、口を噤んで黙り込んだ。
神凪さんが「え?」と聞き返してきたものの、頑なにだんまりを貫く私に、皮肉っぽい溜め息をつく。


「いっそ、このままずっと、ベッドで俺の腕の中に囲い込んでおこうか」

「ば、バカなこと言わないでくださいっ」
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