魅惑な副操縦士の固執求愛に抗えない
恐ろしいことを言って退けられ、慌てて声を上擦らせる私に、ふっと目尻を下げる。


「わりと本気。お前に会えない五日間、どうするかなって……ちょっと悩ましい」


ポツリと付け加えた声が結構沈んで聞こえたから、私の胸はとくんと淡い音を立てた。


「いいじゃないですか。そっちはパリなんだし」


懲りずにきゅんとした自分に焦り、私は膝に両手を突いて肩を力ませた。


「ん?」

「お洒落だし、綺麗だし、食べ物は美味しいし」

「あー、まあな」

「だからどうぞ。CAさんたちと、パリデート楽しんで来てください」


――って、『どうぞ』ってなに。
許可するみたいな言い方。
『恋人』という前提条件があってこその言い回しをした自分が謎だ。


神凪さんは頭の後ろで両手を組み、私に横目を流してきた。
私は居た堪れなくなって、くるっと背を向け、窓に張りつく。


「……そ。じゃ、今度は遠慮なく」


神凪さんが、シートにドスッともたれかかった。
私の失言は気に留めていなそうな反応にホッとしながらも、素っ気ない言葉にチクッと胸が痛む。
もともと私が言い出したことに、神凪さんは同意しただけなのに。
傷ついてる自分が不可解すぎて、スンと鼻を鳴らした。
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