魅惑な副操縦士の固執求愛に抗えない
すると。


「っ……!?」


グイと肩を掴んで引っ張られ、私はギョッとして振り返った。
肩越しにバチッと目が合うと、神凪さんはほんのちょっと虚を衝かれた顔をして――。


「……泣いてる?」

「は?」

「目、潤んでるけど」

「な、泣いてません」


私は不躾な指摘に怯み、ゴシゴシと目元を擦った。


「つれないこと言って、俺がパリでCAとデートするのを想像すると面白くないとか」

「え? ……!」


声を潜めて言われて、ひゅっと音を立てて息を止めた。


「へえ」


大きく目を瞠って言葉を失う私をどう解釈したのか、神凪さんが満足げにほくそ笑む。


「普段塩対応な分、お前にヤキモチ妬かれると爽快だな」

「ち、違っ……」

「気分いいから、パリ土産買ってきてやるよ。なにがいい?」


言葉通り、本当にご機嫌な様子で目元を綻ばせる彼に、意表をつかれた。
心臓がドキッと跳ねる自分に焦って、勢いよく顔を背ける。


「お土産なんて。お仕事じゃないですか」

「土産渡したいからって。……つれない彼女を次に誘う口実になるだろ」

「っ……」


溜め息交じりの呟きに、ドキドキと鼓動が速まる。


「だ、だから。その彼女って……」
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