魅惑な副操縦士の固執求愛に抗えない
私は、喉に引っかかって掠れる声で挟んだ。
彼の視線を感じて、肩を縮める。


「からかうとか本気とか以前に、どうして……私なんですか」


自分の耳で拾ったその言葉が、胸にストンと落ちてきた。
そうだ。その根本的な理由がまったくわからなくて、私は彼に翻弄されている。


だから私は彼の言動をすべて疑ってかかって、本心の在処を探した。
第一印象から最低な人なのに気になって、知りたくて。
今野さんの代わりじゃないとは言われたけど、それなら別の疑問が深まる。


可愛くないとかつれないとか罵りながらも、私に固執するような態度はどうして。
掴み切れないもどかしさに焦れ、もっともっとと欲張りになる感覚は、まるで恋のようで――。


昨夜信じられないくらい熱く抱かれて、絆されてしまったのだろうか。
私は、ごくっと喉を鳴らした。


お願い、なにか言って。
どうして私なのか、なんでもいいからその答えを――。
なのに神凪さんは、無言でふうと息を吐いた。
と、その時。


「お客様、お飲み物をお持ちいたしました。いかがいたしますか?」


ドリンクサービスが始まっていたらしい。
狭い通路を、ドリンクカートが占領していた。
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