魅惑な副操縦士の固執求愛に抗えない
行動は言葉より雄弁。
目は口ほどに物を言う。
今の彼にあまりにもぴったりな諺が頭をよぎる。


複雑な気分になって、ちびちびとアイスコーヒーを飲んでいると、静かな寝息が聞こえてきた。
神凪さんがグラッと傾いてきて、そのこめかみが私の肩にトンと落ちる。


「ひゃっ……? ちょっと、神凪さ……」


私は焦って呼びかけ、すぐに周りを気にして両手で口を押さえた。
私の肩に着地して姿勢が安定したのか、重みが少し増した気がする。
私は無意味に唾を飲み、視界の隅っこで彼の寝顔を観察した。
男の人にしては長い睫毛は伏せられたまま、ピクリともしない。


「答えてもくれないくせに」


溜め息交じりに独り言ちると、胸がちくりとした。
『お前のことが好きだから』って、嘘でもいいから言ってくれたら。
信じられるかどうかじゃなく、信じたい気持ちの方が強い。
なのに。


「切なそうな目で追っちゃって……」


――ズルい人。
心の中で詰りながらも、肩を引くなんて意地悪はできず、窓枠に頬杖をついて彼から目を逸らした。


中途半端に堕とされても堕ちきれない。
私の心は宙ぶらりんで、着地点を見つけられない。
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