魅惑な副操縦士の固執求愛に抗えない
***
日本エア航空110便は、定刻で羽田空港に到着した。
俺は一度マネージメントセンターに立ち寄るが、芽唯は夜勤に備えて早く家に帰りたいと言った。
それでも、空港ターミナルビルを出るまでは一緒だと思っていた。
「それじゃ……。フライト、頑張ってください」
ところが、ボーディングブリッジを通過して到着ロビーに着くなり、芽唯は社交辞令っぽい激励をして頭を下げた。
「え?」
俺はほんのちょっと面食らい、足を止めた。
思わずポリッとこめかみを掻いたが、芽唯はぎこちなく俺から視線を外したまま。
俺たちを追い越していく乗客たちが行く方向を気にしている。
「……サンキュ。そっちも夜勤頑張れよ」
俺は他の降機客の邪魔にならないよう脇に退いて、ヒラヒラと手を振って見せた。
芽唯は肩を縮めて、手荷物受取場に降りるエスカレーターに進んでいく。
俺の視界がその背を捉えられなくなるまで、一度も振り返らなかった。
――一度寝たくらいで、俺のものになる女じゃないか。
目論見が外れ、浮かれていた気持ちが萎れていく。
それにしたって、つれないだろ……。
しかし、俺には彼女を詰ることはできない。
日本エア航空110便は、定刻で羽田空港に到着した。
俺は一度マネージメントセンターに立ち寄るが、芽唯は夜勤に備えて早く家に帰りたいと言った。
それでも、空港ターミナルビルを出るまでは一緒だと思っていた。
「それじゃ……。フライト、頑張ってください」
ところが、ボーディングブリッジを通過して到着ロビーに着くなり、芽唯は社交辞令っぽい激励をして頭を下げた。
「え?」
俺はほんのちょっと面食らい、足を止めた。
思わずポリッとこめかみを掻いたが、芽唯はぎこちなく俺から視線を外したまま。
俺たちを追い越していく乗客たちが行く方向を気にしている。
「……サンキュ。そっちも夜勤頑張れよ」
俺は他の降機客の邪魔にならないよう脇に退いて、ヒラヒラと手を振って見せた。
芽唯は肩を縮めて、手荷物受取場に降りるエスカレーターに進んでいく。
俺の視界がその背を捉えられなくなるまで、一度も振り返らなかった。
――一度寝たくらいで、俺のものになる女じゃないか。
目論見が外れ、浮かれていた気持ちが萎れていく。
それにしたって、つれないだろ……。
しかし、俺には彼女を詰ることはできない。