魅惑な副操縦士の固執求愛に抗えない
私と反対側の端っこには、手の平を返された形の嘘つきパイロットが一人、頬杖をついてジョッキを揺らしている。
テーブルから飛び出た格好になった私が席に収まるには、そこに移動する以外他ない。


私は仕方なく椅子から立ち上がり、バッグを胸に抱えて、彼の斜め前の椅子を引いた。
風見さんを囲む女性たちを、どこか冷めた目で眺めていた嘘つきが、私に気付いた。


「災難だったな。せっかくパイロットが近くに来たのに、あっさり追い出されちゃって」


皮肉めいた笑みを浮かべて、上目遣いで見遣ってくる。
私は黙って腰かけながら、胡散臭い気分で彼に視線を返した。


遠目にもかなりのイケメンだったけど、近くで見るとまた壮絶なイケメンだ。
私と同じくカラーリングしていないのか、色むらのない焦げ茶色の髪。
ちょっとふわふわ、柔らかい髪質のようだ。
襟足が短く、セットされずに額に降りた前髪もすっきりしていて、好感度高いミディアムヘアスタイルだ。


今、皮肉げに細めている目尻はやや下がり気味。
口角の上がった薄い唇がなんとも妖艶で、妙な色気が漂う。
あの女性たちじゃないけど、作業着にヘルメットではなく、金色のラインが入った黒い制服、制帽の方が絶対似合う。
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