魅惑な副操縦士の固執求愛に抗えない
神凪さんが帰ってきたら、きっとその時こそ……彼の本心を聞かせてもらえる。
知りたい。早く知りたい――。


男の人の気持ちが知りたくて、こんなに浮き足立つのはいつ以来だろう。
佐伯さんへの恋心に気付いた時は、彼に彼女がいることを知っていたから、最初からなにも望まなかった。
同じチームで仕事を教えてもらえるだけで嬉しい。
彼の仕事ぶりを、近くで眺めていられるだけでいい――前の彼との別れ以来恋に憶病になっていた私は、それで満たされていた。


確かに今野さんが言うように、私と神凪さんは似ているかもしれない。
神凪さんは、最初から諦めて妥協を覚えて……多分、私以上に恋に及び腰な人だ。
そんな彼が、私に向ける強い欲求。
恐らく、そんな欲求を抱えるのも初めてなのだろう。
本人ですら戸惑うそれが、本物じゃないわけがない――。


「っ……」


自分で導き出した結論に、ドクッと心臓が沸いた。
居ても立っても居られなくなって、私は縋る思いでスマホに目を落とした。
LINEアプリを起ち上げ、トークルームを開く。
そこには、神凪さんから届いた短いメッセージが一つ残っているだけ。


私は思い切って、スマホに指を滑らせた。
『フライトお疲れ様でした』と入力して、何度も見直す。
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